つくばKEKの高エネルギー電子-陽電子衝突型実験 (Belle) によるクォークのハドロン化の研究

柴田研究室では つくば・ 高エネルギー加速器研究機構 (KEK)での電子-陽電子衝突実験 ( Belle 実験) による研究、 特に、生成したクォークからハドロンが形成される過程(ハドロン化)の研究を行なっています。

図1: KEK上空からの航空写真

Belle 実験 とは ?

Belle 実験は 小林・益川理論の検証を主目的として 1999年に始まりました。
小林・益川理論では3世代のクォーク(アップ・ダウン・ストレンジ及び当時未発見のチャーム・トップ・ボトム)の質量項が世代間で混合するとして、CPの破れを説明付けています。
CPとは、C(粒子ー反粒子変換)とP(空間鏡像反転)の積についての対称性のことです。
Belle 実験はボトムクォークを含むB中間子と呼ばれる粒子で、そのCPの破れを観測しました。

Belle 実験ではCPの破れの研究だけではなく、その豊富なデータ量を生かして新粒子の研究をしています。
自然界にクォークを含む粒子は二種類あり、陽子・中性子のように3つのクォークで構成される「バリオン」と、 パイ中間子やK中間子のようにクォーク・反クォークからなる「中間子」があります。 これらの粒子はまとめて「ハドロン」と呼ばれています。
近年、4個以上のクォークから構成されると考えられている「エキゾチックハドロン」という粒子が発見されました。 Belle 実験ではX(3872)、Y(3940)、Z(4430)など、チャームクォークを含む4個のクォークでできたと考えられている新粒子が発見されました。 2011年にはボトムクォークを含むZb(ゼットビー)と呼ばれる粒子を発見しました。

柴田研究室では、 Belle 実験の電子ー陽電子衝突から生成されるクォークのハドロン化について研究を行なっています。

電子ー陽電子衝突によるハドロン生成

この研究ではクォークのハドロン化について調べる為に、電子ー陽電子衝突による反応を用います。 図2はその過程を表すダイアグラムです。
図2: 電子−陽電子衝突によるハドロン生成

高エネルギーで衝突した電子と陽電子は対消滅を起こし、仮想光子を経てクォーク・反クォークの対が生成されます。

 電子 + 陽電子 → 仮想光子 → クォーク・反クォーク (1)

生成されたクォーク対は高いエネルギーをもって反対方向へ運動します。
その際に、多数のクォークやグルーオンが生成されます。
最終的に、これらのクォークやグルーオンはパイ中間子などのハドロンの束として観測されます。
これらのハドロン粒子は揃った向きに発生し、「ジェット」と呼ばれてます。
(1) の過程では通常反対向きに2つのジェットが生成します。
図3 にBelle 実験で生成されたジェットの図を示します。

図3: 電子−陽電子衝突で生成されたジェットの例

これは、宇宙初期(ビックバンから10マイクロ秒くらい)におけるクォークからハドロンの形成を、 人が制御できる形で再現して研究していることになります。

クォークがハドロン化する過程は、「破砕関数」と呼ばれる関数によって記述されます。 柴田研究室では特に、クォークのスピンに依存する破砕関数についての研究を行なっています。 Belle実験 のアップグレード (Belle II)として、中央軌跡検出器(シリンドリカル・ドリフトチェンバー) の粒子識別の性能向上にも取り組んでいます。