HERMESでの研究テーマ

HERMESでの研究テーマは、 「陽子スピンの謎」に関する実験の他にもいろいろあります。 幾つか紹介しておきます。

また研究内容についてまとめられている資料もありますので、 御覧下さい。

クォーク種類毎のスピン成分の測定
柴田研究室も開発に関係した リングイメージングチェレンコフ検出器 を使い、散乱後に生成される粒子の種類を測定します。 どのような粒子が測定されたかという情報は、 陽子内部のどの種類のクォークが散乱されたかという情報と 関連があります。

散乱後に生成された粒子の種類を測定する事で、 陽子スピンを 内部にあるクォーク種類毎の割合にわける事を目的としています。 測定は1995〜2000年にわたり行われ、 現在解析がすすめれらている所です。

生成されるπ中間子対の測定から、 グルーオンスピンに関する情報を引き出す解析もおこなわれています。 柴田研究室が参加している陽子衝突型実験( RICH-Spin ) でも、グルーオンスピンを主眼に研究がすすめられています。

新しいクォーク分布関数の研究
陽子のスピンは クォーク分布関数 によって記述されます。

これまで分布関数は

  • クォークの運動量比の分布
  • クォークのスピン分布
を示すものについてよく調べられて来ました。 これらはすべて陽子の運動量やスピンに対して、 クォークがどれくらい分担しているか表すものです。

最新の実験結果は 陽子の構造は当初考えられていた以上に複雑である事を示しています。 特に陽子の運動方向に対して、 垂直方向へのクォーク運動がより重要視されてきました。

横方向の運動を考慮にいれると、 陽子スピンの回りでの回転運動に関しての分布関数や、 横方向にむいた偏極陽子中でのクォークのスピン分布など より複雑な陽子の構造を記述できるようになります。

HERMESでは縦、横方向に偏極した陽子・重陽子標的を利用して さまざまな分布関数の測定をすすめています。

一般化された分布関数
歴史的には、原子核の構造の研究は 「形状因子測定」 を通して おこなわれてきました。 形状因子というものは、 例えば原子核中での電荷分布、磁気能率 等の空間的な分布にむすびつけられるものです。

一方クォークの分布関数は 陽子の運動量、スピンがどのように構成されているかを記述しているが 空間的なひろがりについての情報はもたない。

近年形状因子と分布関数の両方を統一的に記述する 「一般化されたクォーク分布関数 (Generalized Parton Distribution: GPD)」 の理論的枠組が確立してきた。 高エネルギー電子散乱で生じる Hard Exclusive 光・中間子生成過程の測定は GPDの実験的検証に適したものであり、 HERMESでは特に

  • 深仮想コンプトン散乱 (Deeply Virtual Compton Scattering: DVCS) 測定
  • Hard Exclusive 中間子生成過程測定
をつうじて、GPDの解明に取り組んでいる。
深非弾性散乱におけるハドロン粒子生成メカニズム
深非弾性散乱で生成されるハドロン粒子は 散乱されたクォークが"破砕過程"を経てハドロン化すると 考えられている。

電子によって弾き飛ばされたクォークは 標的物質中を伝播しているのだが、 その間の機構を実験的に研究を行う。

衝突型実験RHICでのクォークグルーオンプラズマ実験 でのQGP探査は、 ハドロン生成過程に対する影響を調べることになるが、 そのためにも生成機構そのものの研究が非常に重要になってくる。

ペンタクォークの研究
2003年に、播磨にあるSpring-8から 「ペンタクォーク」発見の報告がなされた。 ペンタクォークはクォーク5つで構成される、 新しい粒子状態であり、 QCDではその存在を予言されていたが実験的に存在を示したのは SPring-8が世界で最初だった。

その後世界の各加速器施設でもペンタクォークが測定され、 HERMESでも同年その存在を報告した。

ペンタクォークの性質のを実験的に明らかにすること、 その他のペンタクォーク粒子を見付ける事はQCDの直接的検証となり、 HERMESでも積極的な研究がすすめられている。